江戸末期から現代にかけて、3人の華族女性の一生を描いたオムニバス。「
- てんさいの君(勇)
- プリンセス・クタニ(万里子)
- 華族女優(花音子)
てんさいの君」の主人公はWikipediaの「大聖寺藩」にも載っている実在の人物だった。でも、たぶん「プリンセス・クタニ」の万里子と「華族女優」の白樺かの子は創作。加賀の分家の小松藩などというものは存在しなかったようだし、「前田利永」という名前も華族一覧に載っていない。加賀大聖寺藩の前田利鬯なら子爵として載っているのだけど。「てんさいの君」に出てくる「蕗野」も、おそらく創作かな…?
この中では、かの子の人生が最も波瀾万丈だと思うけれども、読んでいて面白かったのは勇と万里子だった。
それにしても、ところどころ文章の意味がとれない。たとえば、132ページの次の文。
「小松の前田さん(あまりにも前田さんが多いので、わたし達は旧藩名で呼ばれることが多かった。でなければ、学校は松平さんばかりになってしまうのである)、…(略)」
松平さんどこから出てきた。「でなければ、前田さんばかりになってしまう」の間違いかしら。
246ページの次の文も、不思議。
そしてわたし達がこの世から去り、太平洋戦争終戦の後、とっくに廃船になってもいいころを過ぎても現役で、…(略)
この文章を書いているのは、すでにこの世の人ではなくなった人、ということなのだろうか。
万里子の父が当主になった経緯もよくわからない。冒頭に「このころはまだ祖父の利永と父の二人の兄も存命だったため」とあるだけで、いつのタイミングで誰が亡くなったのか書かれていない。読み落としているのかな。うーん。