五十嵐くんと中原くん (4)

4巻目は、五十嵐からの告白を受けて、中原が悩み抜いた末に受け入れる決意を伝えるまで。

およそ高校生とは思えないほど女癖の悪かった五十嵐が、こと中原に対しては純情すぎて、読んでいてにやにやがとまらない。これがムズキュンというやつか。中原は中原で、あまりの恋愛経験の乏しさから悩みが無限ループに陥っている様子がよくわかるし、これはこれでにやにやしちゃう。まあ、悩む中で相手からの告白のことを考えると「ドキドキする」のであって「鳥肌が立つ」わけでないあたり、すでに答えが出ているようなものなのじゃないかと思うけども。

19話の最終ページで五十嵐が中原の寝顔を覗き込んでいる後ろ姿が、小さなカットだけどすごく好き。大事に大事に思っているのが伝わってくる。そっと髪でも触れてそうな。

修学旅行の様子からは、ずっと一匹狼を気取ってきた中原が文化祭を契機にクラスにずいぶん溶け込んだことがわかり、ほっこりする。水森だけでなく、他のクラスメイトともそれなりに交流している。このままヤンキーも卒業しちゃえばいいのに。見た目に気を配るのはよいことだけど、別にツッパる必要はない。

中原のトラウマは、五十嵐がそばにいればいずれ克服して乗り越えて行くだろうと思う。難しいのは五十嵐の家庭事情の方。なにしろ親子の問題以前に、両親の夫婦関係が歪んでいる。夫婦というより絶対君主と臣下のようというか、鬼軍曹と兵卒みたいというか。1巻の巻末プロフィールにある両親の職業を見たら納得した。五十嵐が両親と和解できる日は来るのか、あるいはこのまま家を捨てるのか。今後のストーリー展開が楽しみ。

修学旅行編では、水着姿の男の子たちの体型の描き分けがすごいと思った。比較的背格好の近い中原と水森が並んだカットでは、運動能力と筋肉の付き方の違いがはっきりわかる。水森はいかにもスポーツマンだし、中原は見るからにもやしっ子。身長も体格も大きく勝(まさ)っている五十嵐の目には、すごく華奢に映ってそう。実際、ふたり並ぶと華奢に見えるし。なのに女の子と並ぶとちゃんと男の子に見えるから面白い。

巻末のプロフィールで、男子に理系がひとりもいないのが面白かった。だれかひとりくらいは理系だろうと思ったのに。武田とか、ロクに本なんて読まなそうなのに文系なのか。理系は、まさかののんちゃんひとりだった。なお自分の中で「生物」は理系にカウントされません。

それはそれとして、中原はやっぱり美形のうちに入ると思う。

カケルと組み合わせても全然見劣りしないどころか、むしろお似合いだし。顔があっさりしてると、逆に派手な色が似合うんだなぁ。