複式簿記をきっちり理解して読めば、もっと面白かったんだろうなぁ……。勉強しようっと。
目次
序章 ルイ16世はなぜ断頭台へ送られたのか
奴隷が帳簿係を務めたアテネ、ハンムラビ法典で会計原則が定められていたバビロニア、歴代の皇帝が帳簿を公開したローマ帝国。だが古代の会計は不正に満ちていた。それはいかに進化し、複式簿記の発明へ至ったのか。
- ルイ14世の帳簿とフランスの破綻
- 公然の事実だったリーマン・ブラザーズの会計操作
- 国家の繁栄は会計によって決まる
- なぜルイ16世は断頭台へ送られたのか
- 資本主義と近代以降の政府には、本質的な弱点がある
- マルクスやウェーバーは会計をどう見ていたか
- 見落とされてきた複式簿記の重要性
第1章 帳簿はいかにして生まれたのか
奴隷が帳簿係を務めたアテネ、ハンムラビ法典で会計原則が定められていたバビロニア、歴代の皇帝が帳簿を公開したローマ帝国。だが古代の会計は不正に満ちていた。それはいかに進化し、複式簿記の発明へ至ったのか。
- 誰も注目しなかったアウグストゥスの帳簿
- ハンムラビ法典に定められていた会計原則
- 古代アテネでは帳簿操作がはびこっていた
- 不正を追及し暗殺されたキケロ
- ローマ帝国の重大な欠陥とは
- ノルマン/コンクエストによって生まれた世界初の土地登記簿
- ローマ数字の限界
- イタリアの商業都市国家における数字の発展
- なぜ中世イタリアで複式簿記が発明されたのか
- ジェノヴァの驚くべき監査システム
第2章 イタリア商人の「富と罰」
教会法で金貸業が禁じられていた14世紀のイタリアでは、商人と銀行家は常に罪の意識に苛まれていた。だが、最後の審判を怖れるその信仰心こそが、会計を発展させたのだ。彼らの秘密帳簿は、それを示している。
- 巨万の富を築いたトスカーナ商人・ダティーニ
- 教皇庁との金融取引
- 秘密帳簿に書かれていた真実の取引
- 快楽の追求と鉄の職業倫理
- 銀行家と商人を悩ませた罪の意識
- 聖マタイが残した矛盾したメッセージ
- 最後の審判に見る「心の会計」
- 免罪符という発想
- 地獄を怖れたダティーニ
第3章 新プラトン主義に敗れたメディチ家
ルネサンス期のフィレンツェを支配していたメディチ家。ヨーロッパ最大の富豪を支えた会計技術は、なぜ一世代で失われてしまったのか。その謎を解く鍵は、新プラトン主義によるエリート思想の流行にあった。
- 一世代ですべてを失ったメディチ家
- いかにしてヨーロッパ最大の富豪となったか
- コジモはフィレンツェに恐怖をもたらした
- 死刑を免れ、フィレンツェの指導者に
- 芸術のパトロンとしても活躍
- 銀行経営に必須だった複式簿記
- すべての支店で厳しい監査を徹底
- プラトン研究を後押し
- 「聖なる数学を承認の算術と混同してはならない」
- 後の世代に受け継がれなかった会計文化
- メディチ銀行の真の経営者とは
- エドワード四世による戦費の踏み倒し
- 海賊に奪われた『最後の晩餐』
- 新プラトン主義への傾倒が会計と責任の文化を損なった
第4章 「太陽の沈まぬ国」が沈むとき
16世紀になっても会計への偏見は根強かった。だが、スペインは赤字続きの植民地を前に、遂に会計改革に乗り出す。重責を担ったフェリペ二世だったが、オランダの反乱・無敵艦隊の敗北など、更なる悪夢が彼を襲う。
- なぜ世界初の複式簿記の教科書は無視されたのか
- レオナルド・ダ・ヴィンチとも親交があったパチョーリ
- 会計の基本は500年以上前から変わっていない
- メディチ家が破ってしまったルール
- あらゆる取引はイエスの名のもとに
- イタリアは共和制から騎士道の時代へ
- 商人文化を切り捨てる貴族精神の流行
- イエズス会でもタブーとされた会計
- 会計を風刺した最初の絵画
- スペイン帝国の杜撰な植民地経営
- 莫大な負債を残して退位したカール五世
- 「書類王」フェリペ二世の死角
- バランスシートで明らかになった驚愕の債務総額
- 抵抗勢力の出現とオランダの反乱
- 無敵艦隊の敗北という悪夢
- 帳簿で社会と政治を変えるために
- 改革の失敗とスペイン帝国の没落
第5章 オランダ黄金時代を作った複式簿記
東インド会社を中心とした世界貿易で途方もない富を得たオランダ。その反映の秘密は、複式簿記にあった。国の統治者が史上初めて複式簿記を学び、それを政権運営に取り入れることができたのは、一体なぜなのか。
- オランダ黄金時代の教訓
- スペイン帝国から課された重税
- 独立とアムステルダムの反映
- オランダ東インド会社が気づいた一大貿易帝国
- 16世紀に急増した会計学校
- 破滅を示唆する木版画
- 80年戦争とオラニエ公ウィレム一世の暗殺
- マウリッツが成し遂げた史上初の改革
- マリー・ドメディシスのアムステルダム訪問
- オランダ東インド会社を支えた治水の伝統
- 空売りによる株価暴落
- 情報開示を求めた株主たち
- ライプニッツと数学を研究した支配人フッデ
- 自由と責任を重んじたオランダ
- イギリス・フランスとの戦争で何が失われたのか
第6章 ブルボン朝最盛期を気づいた冷酷な会計顧問
ヴェルサイユ宮殿を建設したルイ14世を支えたのは、会計顧問のコルベールだった。財政再建に奮闘したその手腕はアダム・スミスにも賞賛されたが、同時に彼は会計の力で性的を容赦なく破滅へと追い込んだ。
- ルイ14世を支えた会計顧問・コルベール
- コルベールは何を学んでいたのか
- マザランの財産運用で頭角を現す
- アダム・スミスも賞賛した能力
- 敵を屈服させる鍵は帳簿にある
- 会計の技術は「会社」から「国家」へ
- 「何が最善かは貴下の決めることだ」
- フランス全土に広がった会計の精神
- ルイ14世が持ち歩いていた帳簿
- コルベールの死後、崩壊した会計システム
第7章 英国首相ウォルポールの裏金工作
スペイン継承戦争の巨額債務や南海泡沫事件など、イギリスの財政危機を何度も救ったウォルポール。だが彼の権力と財産は、国家財政の秘密主義なくしては得られず、その長期政権も裏金工作によって支えられていた。
- 「国王の財産の調査は、議会が通常やることではない」
- 激論の対象となった財政問題
- スペイン継承戦争による膨大な債務
- 「ノーフォークのペテン師」と呼ばれたウォルポール
- 巨額の債務を帳消しにした「南海計画」とは
- 南海バブルの崩壊にどう対応したのか
- ニュートンさえも欲に目がくらんだ
- 「大きすぎてつぶせない」南海会社の救済
- 「どんな人間も金で動く」
- イギリス史上最長の政権を支えた裏金工作
- 富裕層において会計は無視されていた
- ウォルポールが残した負債
第8章 名門ウェッジウッドを生んだ帳簿分析
イギリス市場最も成功した陶磁器メーカーの創立者・ウェッジウッド。彼は経営に確立の概念を取り込み、緻密な原価計算を行うことで会社を繁栄させた。この時代、富は信心と几帳面な会計の産物だとみなされていた。
- なぜイギリスで産業革命が起きたのか
- 女性にも必要とされた簿記
- 科学の力を信じていた非国教徒たち
- 富は信心と会計の産物とみなされていた
- ウェッジウッドはなぜ成功者になれたのか
- 会計技術は産業の発展に追いついていなかった
- ジェームズ・ワットのもう一つの大発明
- 「より少ないコストでより多く」がモットー
- 確立の概念を取り込んだ原価計算
- 会計委員会を復活させた小ピット
- ダーウィンはウェッジウッドの孫だった
- 会計を幸福に応用したベンサムの功利主義
第9章 フランス絶対王制を丸裸にした財務長官
ルイ16世から財務長官に任命されたスイスの銀行家・ネッケルは、それまで秘密のベールに包まれていた国家財政を、国民へ開示した。そのあまりにも偏った予算配分に国民たちは怒り、フランス革命が起きた。
- 3%の貴族が90%の富を所有していたフランス
- 財政改革に失敗したパーリ兄弟
- 徴税請負人の制度は腐敗しきっていた
- スイスの銀行家・ネッケルが財務長官に
- 過激化する「ネッケル叩き」
- 『会計報告』で芽生えた新たな政治観
- 財政を黒字化させた「特別支出」のマジック
- 財務情報の開示は国家秘密の暴露なのか
- 会計の信頼性こそが政治の正当性を保証する
- 「陛下、これは革命です」
- 会計改革の道筋を作ったフランス革命
第10章 会計の力を駆使したアメリカ建国の父たち
「権力とは財布を握っていることだ」。アメリカ建国の父たちの一人、ハミルトンはこう喝破した。複式簿記を郵政会計に導入したフランクリン、奴隷も個人帳簿に計上したジェファーソン。彼らはみな会計の力を信じた。
- 植民地経営が帳簿に依存していた理由
- アメリカ初期の歴史は債務管理の歴史である
- ベンジャミン・フランクリンの会計術
- 郵便の複式簿記を編み出す
- 資金調達のためスパイと公称したフランクリン
- 奴隷の値段も計上していたジェファーソン
- 公開されたジョージ・ワシントンの個人帳簿
- 相次ぐ戦争で破綻寸前に
- ネッケルを手本にしたモリスの改革
- 「権力とは財布を握っていることだ」と述べたハミルトン
- 政府債務は「自由の代償」
第11章 鉄道が生んだ公認会計士
鉄道の登場により、財務会計の世界は急速に複雑化した。鉄道会社は巨大企業へと成長するが、粉飾決済が横行。その監督のために公認会計士が誕生することになる。彼らは、規則がなく野放し状態のアメリカで奮闘した。
- 会計は善か悪か
- イギリスは19世紀になっても収支を合わせられずにいた
- 財務会計を急速に複雑化させた鉄道
- 鉄道会社では粉飾決済が横行していた
- なぜ「公認会計士」が生まれたのか
- いち早くアメリカに進出したプライスウォーターハウス
- 反トラスト改革を批判したJ・P・モルガン
- 会計の専門的な教育が始まったアメリカ
第12章 『クリスマス・キャロル』に描かれた会計の二面性
19世紀から20世紀にかけて、会計は小説や思想にどのような影響を与えたのか。父親が会計士だったディケンズ、複式簿記の発想が『種の起源』に見られるダーウィン、会計を忌避したヒトラーから見えてくるものとは。
- 会計は「人間の心の惨めさ」を測るのに最も適した方法である
- ディケンズの父親は会計士だった
- ソローの家計簿
- ダーウィンの進化論にも複式簿記の発想が
- 富が科学、産業、芸術の進歩をもたらすと信じたダーウィン
- 経営学の基礎となった「科学的管理法」とは
- 会計を忌避したヒトラー
- 会計士は公共サービスのシンボルとなった
第13章 大恐慌とリーマン・ショックはなぜ防げなかったのか
複雑化した会計は、もはや専門教育を受けた人でなければ扱えない。その中で大手会計事務所は、監査で知り得た財務情報をもとにコンサルティング業を開始する。明らかな構造的矛盾のもと、最悪の日は近づいていた。
- 会計士は公平なレフェリーか
- 「アメリカ企業は闇の部分が光の部分より多い」
- 大恐慌はなぜ起きたか
- 暴かれたJ・P・モルガンの秘密リスト
- グローバル化の中で複雑化していく会計
- ビッグ・エイトのコンサルティング業拡大
- 相次ぐ不正と難解な論議で信用を失う
- 格付け機関は独立性を維持
- コンサルティング部門の利益が監査部門を追い抜く
- 忘れ去られた大恐慌の教訓
- アメリカ史上最悪・最大の不正会計事件
- リーマン・ショックで露呈したビッグ・フォーの問題点
- 金融業界は監査することができなくなった
終章 経済破綻は世界の金融システムに組み込まれている
- なぜ企業や政府は会計責任を果たせないのか
- 経済破綻は世界の金融システムに組み込まれている
- 必ず来る「精算の日」に備えるためには