ドミニック・ローホー著「シンプルに生きる モノを持たない暮らし」を読みました。
断捨離やときめき片づけ本と同じく、「捨てる」ことに徹した本でした。著者は禅や日本の伝統文化に惹かれて日本に暮らし、日本在住歴30年以上になるフランス人だそうです。
シンプルライフを理想とする人たちの間ではかなり有名な人みたい。Amazonのレビューも「バイブル」とまで言う絶賛調のものが多めでした。そんなにすごい本なのか、とかなり期待して読み始めたのですが、自分にはいまいちピンと来ませんでした。というのは、今ひとつ全体をとおして一貫していないというか、細かい矛盾が気になってしまったから。
たとえば、実用性のないモノは捨ててしまおう、と一例として「銀食器をステンレス製の台所用品に変えてみましょう」(P. 44) を挙げているのに、「銀製品を来客のときだけでなく毎日の食卓で使ってみる」(P. 113) と言ったり。銀食器は実用性がないからって処分したのでは。と、ツッコミを入れたくなってしまう。
また、安物買いのゼニ失いをするな、本当に上質なものだけにこだわって所持品を選べ、だから「二流の選択を決して受け入れない」(P. 123) というのはよくわかるのだけど、これと「泥棒が入っても、取っていくモノがないくらいにしておく」(P. 121) がどうも相容れない気がしてなりません。家の中にガラクタがいっさいなくて、一級品しかおいてなかったら、むしろ泥棒は盗むべきモノを選別する必要がなくて仕事が楽なんじゃないかしらん。
などと、細かいところが気になってしまうわけです。たぶん「私はこういう暮らし方が好き」という書き方ではなく、「人生とはこうあるべし」と他人に説くスタイルだからよけいに気になったのだと思います。こういう本がベストセラーになり「バイブル」のようにしている人もいるということは、自信に満ちた断定的な言葉で導いて欲しいと願う人が多い、ということなのかもしれません。
まあでも、この本を自分で購入して所有することなく図書館で借りて読んで終わってしまう自分にとって、志において共通するところは多いとは思いました。バイブルにしたいとまでは思わないけど。私は私、あなたはあなた、という感じです。