時の娘

ロマンティック時間SF傑作選「時の娘」を読みました。

アンソロジー。SFというより、ファンタジーという感じです。

  • チャリティのことづて ― ウィリアム・M・リー(安野玲訳)
  • むかしをいまに ― デーモン・ナイト(浅倉久志訳)
  • 台詞指導 ― ジャック・フィニイ(中村融訳)
  • かりみれば ― ウィルマー・H・シラス(中村融・井上知訳)
  • 時のいたみ ― バート・K・ファイラー(中村融訳)
  • 時が新しかったころ ― ロバート・F・ヤング(市田泉訳)
  • 時の娘 ― チャールズ・L・ハーネス(浅倉久志訳)
  • 出会いのとき巡りきて ― C・L・ムーア(安野玲訳)
  • インキーに詫びる ― R・M・グリーン・ジュニア(中村融訳)

「インキーに詫びる」だけは途中で投げ出してしまいました。冒頭の編者解説には「とびきり技巧的な中篇」とあり、「ここでは心理的なタイム・トラヴェルと物理的なタイム・トラヴェルが併存し、複雑な状況が現出している上に、それを語る叙述法が前衛すれすれの実験的なものなので、最初は難解な印象を与える」そうですが、難解すぎて読み解く気になれませんでした。

本当に原文からして難解なのか、訳のせいで難解に感じたのかはわかりません。が、「トラベル」を「トラヴェル」、「タイヤ」を「タイア」と表記する訳者の妙なこだわりのせいでよけいに読みにくく感じたのではないかと疑っています。そもそもタイトルからして「ロマンチック」でなく「ロマンティック」だし。だから翻訳本は、あまり好きじゃないのよね。原文で読む方が時間はかかるけど、面白い。ことが多い。

もっとも自分も中学生や高校生の頃なら、そういう表記を選んでいた気がします。読みやすさより、何か勘違いしたひとりよがりな「雰囲気」を優先して。ああ、思い出すと恥ずかしいよう。

一番甘くロマンチックだったのは、ヤングの「時が新しかったころ」かなー。冒頭間もなくからオチが見えちゃうけど、そんなの気にならないくらいベタベタに甘い。意外にもフィニイがさほど甘くありませんでした。

「たんぽぽ娘」を意識したアンソロジーと思いますが、やはり本家にはかなわないと思います。あの読みやすさ、あの甘さ。また読みたくなっちゃった。