小麦は食べるな!

小麦が人間の体に及ぼす悪影響について、臨床医の立場から解説した本。

現代の小麦は、1940年代より前に主流だったヒトツブコムギやフタツブコムギとは組成がまったくの別物となっていて、人間の体に害を及ぼす食材となってしまっている、というのがこの本の趣旨です。品種改良によって食物としての性質が変化したというのは、確かにありそう。

ただ、本当に小麦がここまで徹頭徹尾の悪者なのかという点は、必ずしも納得できませんでした。というのは、科学的に説明しているように見える本分とは裏腹に、章の見出しがいちいち扇情的だから。もう直感的に、どうにもうさんくさく感じてしまうんだなぁ…。

とはいえ、小麦製品は他の穀物でできた食品と比べて腹持ちが悪いのも確か。だから、ダイエットで減量したい人は、できるだけ避けるのが賢明だろうとは思います。

そこまでは良いのですが、最後に糖質制限食を勧めるあたりに、論理的な飛躍を感じました。血糖値を乱高下させる性質がある小麦を避けた方が良いのはわかるけど、腹持ちの良い穀物類まで「GI値が高い」のを理由に否定するのは、ちょっと違うんじゃないかと。重要なのは血糖値の上がり方と下がり方でしょう。乱高下がまずいのであって、GI値が高くても緩やかに上がって下がる食品は、糖尿病の人を除けば、むしろ体に良いのじゃないかと思います。

小麦製品が血糖値を乱高下させるというのも、実際には小麦のせいというよりは、小麦製品に含まれていることの多い「砂糖」の影響も大きいのじゃないかな。小麦を避けることにより、結果的に血糖値が安定するというのはありそうだけども。

というわけで、内容は鵜呑みにできないと思いました。いずれにせよ我が家の場合は、グルテン不耐症の人がいるので食事は小麦抜きになっちゃうんですけどね。