「小説家になろう」で公開されたライトノベルを書籍化したもの。
- 魔法使いの婚約者
- 魔法使いの婚約者 補足:エギエディルズ
- 魔法使いの弟子
- 魔法使いの庭師
- 魔法使いの友人
最後の「魔法使いの友人」が書き下ろし。
書籍化にあたって全体的に加筆したようだけれども、無駄に冗長になって読みづらくなった部分がちらほら。全体的に、Web版の方がすっきりした文章のように感じる。花言葉のやりとりのエピソードなども、Web版の方が素直で読みやすかったと思う。と思ってWeb版を見に行ったら、花言葉の入ったエピソードが削られている模様。書籍化にあたって整理したのかな。
ストーリーは面白いのだけど、いかにもWeb小説らしい漢字の使い方が目につく。「Web小説らしい」というのは、手書きではないがゆえに必要以上に漢字が多いこと。変換すればいいだけだから、手書きなら絶対に使わない漢字がどんどん出てくる。自分で書くなら漢字にしないであろう文字を、ざっと挙げてみる。
「顰(ひそ)める」「眇(すが)める」「跪(ひざまず)く」「彷徨(さまよ)う」「抓り(つねり)上げた」「此処(ここ)」「蹲(うずくま)る」「訝(いぶか)しげに」「掬(すく)い取った」「全く以(もっ)て」「最早(もはや)」「流石(さすが)」「所謂(いわゆる)」「論(あげつら)う」「纏(まと)める」「誤魔化(ごまか)す」「躊躇(ためら)う」「立ち竦(すく)む」「戦慄(わななく)く」「迸(ほとばし)る」「囀(さえず)り」「煩(うるさ)い」
読めることは、読める。けど、自分だったら使わない。「躊躇」とか「戦慄」は「躊躇する」「戦慄する」という具合に音読みにするなら使うけど、「ためらう」「わななく」は自分なら漢字にしない。読みづらいもの。「ごまかす」くらいなら、もしかしたら漢字にするかもしれない。うーん。でも、たぶんしないな。
そのくせなぜか「死」という文字を嫌い、Web版では「しんでしまいたい」のように妙なところで漢字を避けたりしていた。
加えて、独特な擬音語というか造語も鼻につく。「きょとり」「ばちり」「ことり」「がさり」「くつり」「はくり」など。もっと普通に使われる擬音語で十分じゃないのかと思うのだけど。こうすることで文章を格調高く見せたいと狙っているようでもあり。の割には、主人公の一人称の中に「やがる」などガサツな表現がしばしば織り交ぜてあったりする。
そんなこんなで、Web小説っぽい漢字の使い方や言葉遣いが鼻についちゃうのが、もったいないと思った。