この著者のように、世界各国でベストセラーになるような本を書ける人が「知能障害あり」と診断される知能テストって、何だろう。どうしたら、正確に知能を測定することができるのだろう。
重度の自閉症の人というのは、出力装置が壊れている状態なのかな、と思いました。だから頭の中にいろいろと考えていることがあっても、「会話」という形でのアウトプットが出せない。逆に声に出す必要のない、頭の中にただ連想として浮かんだ言葉が勝手に声に出てしまう。そういう障害なのかなと思いました。たぶん、そう単純なものでもないのでしょうが。自分の精いっぱいの理解が、そんなところ。
面白かったのは、「怒っている人の表情の変化が面白いので、わざと怒らせることがある」こと。
僕は怒っている人を見て、反省したり、怖がったりすることはありません。いつもと違う表情が記憶に強く刻まれ、もう一度その顔を見たくなるのです。ビデオの再生ボタンを押し、好きな場面を繰り返し見るような感じで、わざと怒られる行動をとることさえあります。
その結果、また怒られることになり、僕は「しまった」と感じます。けれども、いったん脳が覚え込んだ娯楽を中止することは難しいのです。
いらいらさせて申し訳ないと思いながら、相手を観察してしまう、そういうことは誰にでもあるのではないでしょうか。
うーん。誰にでもある、とまで言えるかなー?
どうして怒るのか理解できないために、怒らせてしまうことがある、というのなら、すごくよくわかるんだけど。表情の変化が面白い、というのもちょっとわかる。だけど、どうすると怒らせることになるのか理解していながら、わざとやるっていうのは、これだけ理性的な文章を書く人のやることとしては、何だか不思議な感じがしました。
目次
第1章 僕と自閉症
- 僕と自閉症
- 刺すような視線
- 障害を抱えて生きること
- 夏が来るたび
- 挨拶
- 植物
- 空いっぱいの青
interview① 「壊れたロボット」のような身体と向き合いながら。
第2章 感覚と世界
- 笑顔
- 乗り物
- 目
- 水が恋しい
- フラッシュバック
- 観察
- 言葉
- デジャブ
interview② 音楽が、僕に言葉を運んでくれる。
第3章 他者とともに
- 悪い人間
- 涙
- 話せない僕の望み
- 絆
- 人の話を聞く
- 質疑応答
- 広くて狭い僕の世界
interview③ 自分が望むように、学びたかった。
第4章 考える歓び
- 罰
- 心配性
- 雨
- 新幹線の雨
- 夕日
- 空っぽな心
- 想像上の僕
- よりどころ
interview④ 海外で初めての講演を終えて。
第5章 今を生きる
- 人生
- 苦しみ
- 必然と偶然
- 魂
- 失敗
- 事故の確率
- 別れと始まり
根源的な人間の豊かさ 佐々木俊尚
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